本研究では、地震時の大空間構造物の崩壊メカニズムを分析することを目的として、これを実現するための並列構造解析システムの開発を行ってきた。具体的な研究成果について、以下にまとめる。 1. 並列構造解析の基盤となる並列処理機構の調査研究を行い、ハードウエアおよびソフトウエアに関して、今回の目的に適合するシステムの設計を行った。具体的には、一般技術者の利用を考え、パーソナルコンピュータ(以下PCと略記)により構成されるシステムを目的とした。次に、並列処理の形態としてメモリ分散型のメッセージ通信による並列処理機構の実装を検討した。当初は、OSのシステムコールを利用した基礎的な部分からの開発を試みたが、非常に高度な作業が必要となったため方針を変更した。そこで、システムの汎用性を保持するために、並列処理機構は一般的に利用されているものとしてMPIを選択した。これより、大空間構造物に動的解析を効率よく行うための基盤が構築され、今後の機能追加により、より高度な解析を実行可能となる計画である。 2. 並列処理機構を組み込む基盤となるシステムの開発を完了した。単一CPUのシステムにおいては、ある程度の大空間構造物に対して崩壊性状の分析が可能となり、研究グループでの実際の運用に関しても十分な精度と能力を確認している。現在は、さらに大規模な解析を実行するために、ワークステーションとの連携を考慮したシステムの拡張を進めている。これは、ユーザーインターフェイスをPCのウインドウ環境で行い、数値演算をワークステーションなどの高速CPUサーバーに分散させることにより効率的な解析を可能にすることを目的としている。さらに、並列処理機構の汎用性を利用してスーパーコンピュータとの連携も可能になると考えている。
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