研究概要 |
本研究では,木造住宅の壁体に設けられる内部通気層の熱・通気特性を明らかにすることを目的として,Computational Fluid Dynamics手法を用いた通気層内気流解析を行っている.平成9年度に得られた成果を以下に示す. (1)通気壁体模型を作成し,外界気象に曝露して実測を行った.実測結果を基に,低Re数型k-eモデルを用いて通気層内の数値解析を,定常・非定常で行った.その結果,通気層内での自然対流による集熱が行われていることを,実験・数値解析から示した. (2)通気層内の数値解析をする際,通気層のみの解析では,計算が不安定になる.そのため,通気層背後に空間を付加し,計算を行った.その結果,計算は安定に推移し,非定常解析を行うことが可能となった. (3)非定常解析の結果から,通気層の集熱量は,集熱量あたりで最大100W程度あり,集熱量の室内側表面から空気が取得する熱量は,総集熱量の1/3程度であることを示した.また天空日射のみの場合でも上昇気流があることを示した. (4)屋根内に通気層を設けた小屋裏・床下模型を作成し,通気層内の熱・湿気特性に関する実測を行った.その結果,通気層が,躯体内の除湿効果を持つことが明らかになった.また通気層からの流出気流の風速を実測した.実測結果は(2)で行った解析結果とほぼ同程度であり,数値解析法の有用性が示された. (5)通気層を持つ建物のシミュレーションを行う前段階として,小屋裏・床下模型の非等温数値解析を行った.その結果,屋根内に通気層を持つ検討ケースで,換気性状に優位性が見られた. 次年度は,通気層内の熱・湿気性状に関するシミュレーションを行う予定である.
|