はじめに: 音に対してどれだけ注意が向くかということは、報知音の設計をする上で非常に重要なことである。注意量の客観的指標として生理的な反応を利用することが考えられる。現在、瞬時心拍数の変化には、「選択的注意」がある程度関連していることが示唆されている。本研究ではいくつかの音刺激と環境条件のもとで被験者実験を行い、瞬時心拍数や主観的申告の関係について考察した。 研究経過: 9年度は、実験施設全体の環境を構築し、瞬時心拍数を計測するシステムを完成させた。また、予備的実験として基本的条件である音量を制御した実験を行った。10年度は音刺激の時間的パターンを変化させた場合の瞬時心拍数の変動について、被験者の注意状態をコントロールした上での実験を行った。 実験内容: 実験の具体的方法としては、被験者を使った聴取実験を行う。実際の生活場面における作業状態での精神的な負荷を考慮し、単に聴取してその印象を評価させる条件と、数字を用いたパズルを思考的作業として与える条件を設定した。音刺激には2kHz純音の断続音を使用した。On-timeとOfr-timeは100msecから8secの間に設定し、徐々に変動する音や急激に変動する音を合成した。ピンクノイズの継続音も比較のため加えた。 評価指標としては、SD法による主観的な申告と瞬時心拍数の変動(申請機器による)を用いた。 実験結果: これらの実験により、瞬時心拍数に定位反応が顕著に見られるための音響的要因は、以下のような2点にあることが判明した。(1)規則的なパターンよりリズムに変化のある音(2)継続性のある音(On/Off-timeが短い場合も含む) なお、実験した音の条件はまだ少ないため、継続的に検討してゆくことが必要である。
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