地下鉄は都市機能への影響が最小の高速で輸送効率の高い公共交通機関として注目を浴び、全国的に開発が相次いでいるが、既にある都市空間の中に新たに駅を開設するため、同時に自転車の駐車空間を碓保することは非常に困難な状況にある。そのため、放置自転車は社会的にも公共施設機能の低下、通行上の障害や都市景観の悪化などの原因となり、問題は深刻である。自転車放置禁止区域の設定や自転車駐車場の有料が実施され、その効果が期待されているが、このような行政的な問題解決の取り組みには限界があり、最大限の効果を発揮するには、利用者の理解と協力が大前提である。本年度は、放置自転車の現状の実情を整理し把握するという第1段階の目的を達成するために、自転車利用者、自転車駐車場形態、鉄道駅形態の相互関係について、名古屋市内の主要鉄道駅において、ヒヤリングや写真撮影、自転車駐車場状況調査を行うとともに、関連する各種統計資料・文献の収集・整理を通して、自転車駐車場の設置状況や利用状況、放置自転車の現状を把握した。また、地下鉄開発が行われている主要都市(京都、福岡、札幌等)の実情についても現地調査を行うとともに、大都市・中都市を対象に、鉄道駅に周辺のおける自転車放置の現状、自転車駐車場の整備状況、有料自転車駐車の運営、さらに、自転車対策費等についての資料収集を行った。その結果、新規開通の地下鉄駅はもとより、既存の駅周辺においても、放置自転車問題が表面化し、年間l万台を越える放置自転車を撤去し、自転車駐車場の整備や運営のために年間数億円の経費を費やしている都市も少なくなく、ほとんどの都市で、深刻な問題となっていることが、明らかとなった。また、自転車問題の解決には、利用者の理解と協力が不可欠であるという立場から、次年度実施する予定である利用者意識調査の予備調査を実施し、次年度実施予定の意識調査の調査項目の検討を行った。
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