2ヶ年研究概要: 都市再開発の事業計画では、外部から要求される社会的条件ならびに内部主体からの要求条件が錯綜し、それを整理することが建築企画作業において大きな比重を占めている。本研究では実務家に対する聞き取り調査を通して、これらに影響を及ぼす各種要因と変化の構造について検討してきた。従来の計画手法では、各分野の専門家が個別に条件を検討し、その結果を建築企画者がコーディネートすることで設計条件を決定してきたが、この作業プロセスは複雑な上に手戻りが多く効率的ではない。複合都市建築の典型事例であるホテルを対象に設計条件確定プロセスにGAを応用して簡略化し、その操作性の検討を試みた。 1. 事業性検討用計算式の作成 ホテル事業を複合開発内において新規に行なう場合の事業性について投資利回率を評価関数として検討を行なうための計算式モデルを作成する。実際には立地周辺の地域性や文化性を鑑みて計画を進めなければならないが、都市内でのロケーションならびに、事業プロジェクト内での他施設との複合比、客層に絞って検討を進めた。 2. GAによる事業性検討 可変条件を全て当てはめることによって得られる評価関数の最適値を求める操作をGAによって簡略化した。収入が増大すれば利回率が向上するのは自明であるが、客室単価を引上げることによって客室稼働率や実収率は低下し、宿泊客の満足度を高めるために建設費も増大するため、一義的には判断がつきにくい命題となる。変数限定モデルであるが、計算量の大幅な軽減が期待できることが明らかになった。 3. GAを用いた最適化設計手法の検討 稼働率や宿泊単価なと事業採算性に関わる重要な数値も競合事例の調査結果や需要調査の結果を考慮して設定しているのが実状であるが、開業後の実績から判断される各種条件と稼働率、実収率なとの関係を函数として捉え、実態調査をもとに稼働率や実収率を評価関数としたGAとしてプログラムすることで建築企画者の勘に頼られていた剖分を軽減することができるであろうことが明らかになった。
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