1. 各地域で伝統的に継承されている固有な架構法による代表的民家18棟に対して、架構における水平領域と高さの諸区分により、横架材の配置の多様性とその出現頻度を示した。また、軸組と小屋組の境界に位置する上屋梁と他の構成部材の関係を分析した結果、上屋梁が折置に納まる型では、上屋・下屋の領域区分にとらわれない恣意的な部材配置の様相が認められた。上屋梁が京呂に納まる型では、下屋構造の折置から京呂への移行とともに、上屋・下屋を含み込んだ架橋の整形化がすすんでいく傾向が見られた。 2. 小屋荷重の伝達経路の複雑さと分散範囲の分析においては、荷重の伝達方向と、到達点までに費される部材数の関連性を考察した。個々の荷重経路において移動方向が生じる部材配置を、上屋・下屋の関係から序列化し、また経由部材数の多寡が生じる構法上の要因を抽出した。一方、荷重経路の集合形式を検討した結果、上屋・下屋間の空間的な展開性と、重層した梁・桁・束に見られるような架構部材の複雑性の双方が、架構形式を特徴づけていることがわかった。 3. 小屋荷重の分散度と部材断面積の関係については、建物の中通りに大黒柱を据え牛梁で結んだ大黒柱形式と、一対の柱を胴梁で結んだ鳥居形式により異なった結果が得られた。大黒柱形式では、おおむね断面の大きな部材ほど多くの荷重がかかるものの、特別に太い大黒柱や牛梁にはそれほど荷重がかからず、部材断面と荷重分散度の関係はまちまちであった。鳥居形式では、断面の大きな対柱に荷重が集中する合理性が見られる一方で、対柱を結ぶ太い胴梁にはあまり荷重が伝達しないが、全体的には大黒柱形式に比べ部材断面と荷重分散度がバランスよく対応していた。また、上に述べた荷重分散の態様を軸組の立体的な構成として図解した。
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