研究概要 |
本研究は、地籍台帳を分析することで市街地宅地所有状況を解明することを目的とする。本年度は、明治45(1912)年4月に東京市区調査会が発行した『東京市及接續郡部 地籍臺帳』に記載されている東京市全有祖地(1,310万坪、57473筆)をデータベース化したうえで、大地主の土地所有形態を類型化しそれぞれの形態別に土地活用について考察した。東京における土地所有問題に関する実証的な研究としては、竹内余所次郎氏により明治40年『平民新聞』第1号から連載された論文、「東京市の大地主」があり、竹内氏の調査の5年後の台帳を使い、同じ方法で比較分析した。この5年間には、日露戦争に伴う地租税の増徴の影響で土地の売買件数が急増し、宅地地価修正法が定められるという社会状況の変動があったが、竹内氏の予測に反して、土地兼併は進んでいなかったことがわかった。東京市の全有粗宅地の約1/4の面積を所有する、1万坪以上の大規模地主140人について宅地所有形態を、「在住」所有地と「不在住」所有地の面積比で5タイプに分類した。所有形態の違いにより、都市への関わり方すなわち土地活用の方法が異なるだろうと推測したが、明確な違いはこの段階ではみえていない。華族らの大規模土地所有者による新しい住宅地形成が始まるのは、大正中期頃である。現存する東京の地籍台帳は、昭和6年から10年の内山模型製図社発行のものと昭和27、28年の不動産調査会発行のものがあるが、次の台帳において、商人地主と華族地主の所有地に活用の違いが顕れると考える。類型化した大地主の所有地の変遷をたどることにより把握が可能となるであろう都市形成について言及することが今後の過大である。
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