人間は、椅子やベンチ以外にも様々な形状の物的環境に対して、寄りかかったり、腰を下ろして休息する。このとき、物的環境は多様な休息姿勢をアフォードする(提供する・可能にする)装置として機能する。本研究は、こうした着想のもとに、身体を支持する環境の新たなデザインを生み出すための設計資料を作成することを目的としたものである。 本年度は、休息姿勢のうち寄りかかり姿勢について分析した。まず、街中の寄り掛かり姿勢を写真により100例ほど収集した。収集された代表的な姿勢について、体幹直立筋、腹直筋、大腿筋、ヒラメ筋の筋活動量を計測し、休息性の高い姿勢を6種類抽出した。次に、高さが自由に変えられる水平面・垂直面からなる実験装置を制作し、寄り掛かり姿勢をアフォードする高さ寸法について実験・検討した。実験は遠目に見て判断する視覚実験と実際に寄りかかって判断する行動実験の2種類を行った。測定して得られた高さは、各被験者の身体の大きさに対する比率としてまとめた。 実験の結果、身長の55〜80%の高さでは、多くの寄り掛かり姿勢が生起するが、55%以下になると寄り掛かり姿勢はほとんど生起しない。寄り掛かり姿勢をアフォードする高さ寸法は、視覚的判断と行動的判断では、ほとんど差がないことなどが明らかになった。
|