建築は一般に空間芸術の非再現芸術或いは形式芸術に分類され、通常は絵画や彫刻のように具体的な物を再現することはない為、人間の持つ空間観をあらわに映し出してきた歴史遺産と考えられる。音楽もまた同様に時間芸術の形式芸術に分類され、数多くの残された音楽作品にはそれぞれの時代の人々の時間観が映し出されている。人々がこれらの空間と時間をいかに確認し観測していたかは時代によって異なるが、その変化の経過には空間と時間とで何らかの共通性があるのではないかという考えが本研究の発端であった。本研究は、同時代の建築と音楽を比較する上で、空間観と時間観の変化の並行性により、建築と音楽の変化に何らかの並行性を見いだそうというものである。 本年度は、建築と音楽で用いられた尺度の体系について考察する中で、特にフィレンツェ大聖堂の各部の長さの比例と、そのフィレンツェ大聖堂献堂式のために作曲された楽曲「Nuper rosarum flores」の時間的長さの比例との関連性についてもついても考察した。その結果、この曲がこの建設に現れる各部の比例を参照して作曲されたということに関しては疑問が生じたが、これら双方が、共にソロモンの神殿の比例を参照して作られたということは考えられ、それを日本建築学会大会にて発表した。 なお、この研究のための書籍、研究に際し必要となった消耗品(文房具類)は本年度の補助金より購入した。
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