研究概要 |
ヴィエトナム/フエ・グエン朝宮殿建築の木造架構の設計・施工方法の把握を目的とし,その一助として復原模型の製作を試みた.本年度は模型製作に必要な資料を以下の調査項目に分けて収集し,総合的理解に努めた. 1.ヴィエトナムにおけるものさしの使用方法について大工などの伝統的技術保持者に対して聞き取り調査を進めた.その結果,ものさしは用途として架構の設計のための営造尺,屋根の勾配を決定するための肘尺,吉凶を占う魯班尺の三種類があることが判明した.一尺あたりのメートル法による換算値は,400mmを若干越える範囲で収まることも分析された. 2.大工道具の分類を個別の名称,その使用方法を中心に行い整理を試みた.その結果,台鉋,鋸などの道具は押して木肌を削ること,硬木を用いるため鉋の刃を45度に立てることなどが判明した. 3.木造架構の接合部について,仕口・継手・組手の分類を進め,名称,使用箇所,標準化された形状と特殊な部分に用いるものとの識別を行った.その結果,荷重など構造的負荷の大きい箇所とそうでない箇所の二つに大別して,形状による分類が可能となった. 今後の研究の展開としては,以上基礎的研究を踏まえて模型用の原寸図を作成し,適宜図面作成作業を通じて問題点を整理する.なお,関連研究の成果として,ヴィエトナム/フエ・グエン朝王宮の復原的研究(その1〜その10)が日本建築学会大会梗慨集の掲載されおり,継続的に研究が進められている.
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