昨年度行った作業は、前年度に引き続き学生に依頼してデータの入力を行った。データーベースは2000例を越え、これを使用して、以下の研究を行った。また、不足していた中世住宅の史料の刊本と、新たに刊行された史料、論文集を購入した。調査は、前年度に引き続き奈良国立文化財研究所の古記録マイクロフィルムを調査し、鎌倉市役所で発掘調査報告書を閲覧した。 研究成果は、、まず、武士住宅について『吾妻鏡』を中心にして、「明王院文書」なども検討し、これまで不明とされていた鎌倉幕府の将軍御所の詳細な建築構成を明らかにした。これについては、中央公論美術出版から刊行した『建築史の空間 -関口欣也先生退官記念論集-』に「鎌倉武士住宅の空間構成 幕府御所を中心として」と題して掲載した。また、鎌倉の北条氏の邸宅が、通説と異なった位置にあり、御成御殿をもつものであることを、建築学会の大会で発表した。なお、現在は太田博太郎監修『日本建築様式史』の中世住宅の章を執筆中であり、上記の鎌倉遺文武士住宅の成果を生かして、書院造の形成過程を論じたものになる予定である。
|