研究概要 |
西欧諸都市の都市形成過程における最も典型的な現象である都市境界としての城壁の構築と解体に伴う都市空間構造の変遷を解明した.具体的事例として、シャルル5世とルイ13世という強固な城壁の影響下にあり現在もなおその痕跡を明瞭にとどめているパリ市第II区ストラスブール・サン=ドニ地区を取り上げた.現地に保管されている地籍図(cadastre)を一次資料として収集・分析を行い,19世紀初頭から現在まで、6段階(1833年、1896年、1903年、1937年、1968年、l991年)にわたる土地区画(parecelle)を抽出し,それらによって構成される土地区画組織図の変遷をGIS(地理情報システム)を用いて土地区画組織図(p1an du tissu parcellaire)として図化した。本研究では、主としてパリ市における歴史的一境界域の空間構造の把握が主であったが、その際に抽出した土地区画が、より普遍的な課題である「歴史性」という概念を把握するための貴重な手がかりを与えることが明らかになった.フランソワーズ・ブドン教授は「土地区画は人が導入した最も小さな共通因子であり.そこには、土地の歴史を形作る法的,社会的,経済的要素が再発見され、農業や居住形態における諸経験が刻み込まれている。都市組織(tissu urbain)における土地区画の歴史的分析は、場所と建築,場所と機能との間のつながりを明らかにする手段である」と述べている.この土地区画を都市空間構造を構成する基本要素として捉え直し、それらが局所的な変遷過程においていかなるルールや相互作用を呈しているのか、そしてそれらが全体の状態に対していかに影響し、そしてまたそうした全体の動きが個々の構成要素の関係性をどのように変化させていくのか,その一連の自己組維化の過程をGISを用いてより詳細に解明することが今後の重要課題として浮上した.
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