本研究の目的は、ナノ・クラスターを基本単位とし積極的に利用したグラニュラー薄膜を得るのに必要なクラスター源を作製することを基本とし、1:プラズマガス反応クラスター堆積装置で得られるナノ・クラスターのサイズ分布と平均サイズを制御するための手法の確立を行う、2:改良されたプラズマ・ガス反応クラスター堆積装置を用い、サイズと分散状態を制御した磁性金属クラスター埋込みグラニュラー薄膜を作製し、磁性やそれと関連して起こる磁気抵抗効果等の輸送現象と構造との関係を明らかにしていく、以上2点を目標に研究が行われた。 ナノ・クラスターのサイズ分布と平均サイズを制御では、スパッタ室にスパッタのためのArガスと金属蒸気冷却ならびに生成クラスター搬送のためのHeガスを同時に導入することで、クラスターのサイズ分布を単分散に保ったまま平均サイズを4〜13nmの範囲で制御できるクラスター源とすることができた。 またそのときの平均蒸着速度は水晶振動子型蒸着モニタによる観察から約0.5nm/minであることがわかり、サイズ制御されたナノ・クラスター堆積薄膜作成が可能となった。 これらの成果は学会での口頭発表ならびに論文として公表されている。 現在ガスの流量・圧力の詳細な制御によるより小さなクラスター作製の可能性を検討している。 同装置を用いCrならびにCoナノ・クラスターを作成した。 Coナノ・クラスター堆積膜に関して、磁性、電気伝導、磁気抵抗等の輸送現象測定を行い、ナノ組織特有の超常磁性特性や巨大磁気抵抗効果が観測され、そのクラスターサイズ依存性についての研究が現在進められている。カー効果測定さらに放射光を用いたX線磁気円2色性測定が外部との共同研究として進められている。
|