本研究は、プラズマガス反応クラスター源を用いたナノ・クラスター堆積薄膜作製に関して、(1)クラスターサイズの制御、(2)クラスターの生成量、そして(3)堆積後のクラスターの評価、のための基礎研究として平成9年度に引き続き行われた。 平成9年度には、単分散ナノ・クラスターを平均サイズ4〜13nmの範囲で制御できること、平均蒸着速度が5nm/minと高強度ビームが得られることを達成した。本年度は、飛行中ナノ・クラスターの詳細なサイズ分布を測定するために飛行時間型質量分析(TOF-MS)が重要な手法であるとの認識から、同方法を用いた解析に関する研究を行った。この研究を通じて、初めて遷移金属系においても安定クラスター(いわゆるマジック・ナンバー・クラスター)がTOF-MSを通じて観測されることを明らかにした。遷移金属クラスターについては、これまで種々のナノ・クラスターにおける特異な物性に関して報告がなされているが、マジック・ナンバー・クラスターに関しては報告はなかった。観測されたマジック・ナンバーから、遷移金属系のナノ・クラスターでは、正20面体とそれに関連するクラスターが安定であること、バルクでbcc構造を持つ系ではさらにbcc構造に起因するクラスターも安定になることが明らかになった。すなわち遷移金属系ナノ・クラスターでは、希ガスクラスターと同様に構造安定性が重要であり、アルカリ金属に見られる電子閉殻構造に起因する安定性とは異なることがわかった。ことがわかった。これらの成果が国内外の学術会議と学術誌に報告された。さらに、遷移金属の酸化物に関しても特異な安定性を示すクラスターを見いだしており、現在学術誌へ投稿中である。
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