研究概要 |
液体金属の表面や界面の構造に関する情報は、表面近傍における成分比がバルクの値から著しくずれる表面分離や相分離現象を科学的に解明する上で不可欠である。また、電気化学反応や触媒作用を制御する技術的課題にとっても重要な基礎情報である。液体金属の表面や界面の構造を調べる実験的手段の1つとして、X線の全反射現象を利用した斜入射X線反射率法がある。表面に対してX線を平行に近いきわめて浅い角度で入射すると全反射が起き、この様な全反射条件下ではX線の物質への侵入深さは数nm程度に抑えられ、また観測される反射強度プロファイルはその深さ領域の密度分布を反映する。しかし、斜入射X線反射率法による液体/液体界面の評価は上層の液体によるX線の吸収が非常に大きいという理由から実際には殆ど行われていない。本研究では、この問題を克服する新たな方法として,エネルギー分散型による斜入射X線反射率測定法の開発を試みた。液体/水銀界面での反射率測定として,水/水銀界面について測定を行った.この測定により,液体/液体界面での反射率測定がエネルギー分散型を利用することで十分に可能になることが立証できた.また,エタノール/水銀界面での反射率測定から,その遷移領域の厚さは水/水銀界面に比べ小さいことが明らかになった.さらに、水銀の電位と水溶液/水銀界面の遷移領域の厚さとの相関について評価するため,KC1(0.1mol/1)水溶液を用い,電気的に中性となる電位を中心に反射率測定を行った.その結果,水銀の電位が電気中性条件より卑方向に働くと界面の遷移領域の厚さは水/水銀界面のケースと一致するが,貴方向に働いた場合,遷移領域の厚さが増加する傾向が認められた.水銀の電位が貴方向に働いているとき遷移領域の厚さが増加した原因としては,アニオンの特異吸着が一因と考えられる.
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