研究概要 |
Fe系金属薄膜の界面超微細磁気構造を明らかにし、より高特性の磁性材料を得るための知見を得る目的で内部転換電子メスバウァー効果(CEMS)を用いて界面超微細磁気構造の解析を行うことを目的として本年度は以下の研究を行った。 2種類のFe系薄膜を以下の方法で作製し膜膜構造と磁気特性の測定を行った。 1)fcc-Fe/Cuおよびbcc-Fe/Auエピタキシャル人工格子を既設の分子線エピタキシ-(MBE)装置を用いて作製した。超高真空下でMgO(001)単結晶基板上にFe層厚の異なる(1ML〜10ML)とCuを交互に約20周期積層させ、最後に防護層のCuあるいはAu層を積層させた。 2)既設の高真空4元イオンビームスパッタ(IBS)装置を用いてbcc-Fe(Co,Ni)/Cu多層膜を作製した。MgO(001)単結晶基板上にバッファー層Fe(50Å)を積層させた後、 Cu(15Å)とFe(Co,Ni)(10Å)を交互に20層積層させた多層膜を作製した。これらの試料に種々の熱処理を行った。1),2)で作製した試料の膜構造(結晶構造、人工周期性、格子定数など)をX繰回折を使って評価した。磁気抵抗効果の測定は通常の四端子法を用い、膜の磁気測定は試料振動型磁力計(VSM)および超伝導量子干渉磁力計(SQUID)を用いて測定した。1)については磁化曲線から飽和磁化および磁気温度曲線からキュリー温度を見積った。その結果、飽和磁化はFe/Cuでは層厚とともに減少し、Fe/Auでは層厚によらずほぼ一定であることがわかり、キュリー温度は両系とも層厚の減少とともに低下することが明らかとなった。2)では熱処理により磁気抵抗(MR)変化率が増加することが明らかとなり、MR変化率は結晶の配向性に依存することがわかった。
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