本研究は主として縮合芳香環からなる低温炭素の光電変換素子への展開に関する基礎的な研究を行うことを目的とする。本年度は以下のことについての検討を行った。 1. ナフタレンピッチからの縮合芳香環成分の抽出 九州大学より提供されたナフタレンピッチをベンゼン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ピリジンにより順次抽出した。1H-NMR、元素分析およびFTIRより各抽出分の構造を推定したところ、いずれも基本単位構造は類似の4〜5環程度の縮合芳香環であることが分かった。これは、溶剤により得られる成分の構造が異なる石油系ピッチ系とは異なる。 2. 電子活性物質との相互作用 ベンゼン可溶分(BS成分)にブロモアニルを添加し、その吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを検討した。ブロモアニルの添加により吸収スペクトルはほとんど影響を受けないが、蛍光発光強度は著しく減少した。この消光はBSの励起により生じた電子がブロモアニルに移り、その結果再結合発光が抑制されたためとも考えることができ、次年度の光電変換機能の特性化が期待される。 3. アクションスペクトル測定装置の構築 購入したモノクロメータ装置を用い光電流のアクションスペクトルを測定する準備を行い、次年度に備えた。
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