作製した水素/窒素気流中での熱処理装置を用い、水素濃度および熱処理温度を変えて、アナターゼ型二酸化チタン粉末に酸素欠陥の導入を試みた。熱処理温度が400から500℃のときは拡散反射スペクトルの400nm付近の反射率の減少が観測され、それ以上の温度では500nmより長波長側の反射率が増加する。前者の観測された波長は、as-grown状態のアナターゼ単結晶を酸素雰囲気下で熱処理した際に同じ温度域で新たに生じる吸収の波長とほぼ同じ領域である500nm以上の波長域の吸収増加は、自由キャリアによるものと推測される。これらのことから、水素雰囲気下での熱処理により、何らかの欠陥が生じることがわかった。また、800℃での水素濃度依存性から水素濃度の増加に伴いルチル相への相転移が促進されることを、x線回折より明らかにした。さらに、700℃での熱処理の結果、a、c軸の格子定数が減少した。以上の結果から、この処理により酸素欠陥が生じているものと判断した。単結晶を用いた同様の熱処理を行い、その吸収スペクトルの変化を調べた。その結果、吸収端の長波長側へのソフトや、長波長領域の吸収の増加などが認められ、ほぼ同様の結果をしめしたが、粉末でみられた400から500℃の熱処理での400nm付近の吸収増加は、観測されなかった。 一方、アルミニウム、バナジウムをドープしたアナターゼ単結晶育成について、pureな単結晶育成時と同様の方法で行ったところ、前者は小さいながらも単結晶の育成に成功したが、後者は塊状の多結晶体となった。単結晶育成条件の改善と、ド-ピング量を変えた試料作成、他の元素のド-ピング、育成単結晶のキャラクタリゼーションなどが今後の課題である。
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