平成9年度は、ユーロピウム付活硫化カルシウム(CaS:Eu)赤色蛍光体中の捕獲準位に関する知見を得るために、過渡熱蛍光(TTL)測定装置の作製及び評価を行った。TTL測定装置は、交付金により購入した試料冷却装置(液体窒素クライオスタット)及び、既存のデジタルオシロスコープ、水銀ランプ、光電子増倍管、パーソナルコンピュータにより構成された。作製したTTL測定装置の性能を評価するために、標準試料として銅付活硫化亜鉛(ZnS:Cu)青色蛍光体を用い、TTL曲線の測定を行った。その結果、213K近傍にトラップに起因すると考えられるピークを確認した。現在、得られた測定データの精度について検討を行っており、終了次第、CaS:Eu蛍光体のTTL曲線を測定する予定である。 平成10年度は、交流薄膜EL素子のパルス電圧印加時における発行輝度及び、伝導電流の過渡特性を測定するためのシステムを作製する。CaS:Eu交流薄膜EL素子において、Eu添加の材料としてEuSを用いるよりも、Eu_2O_3を使用した場合の方が、発光強度が強くなることがこれまでの研究によりわかっている。この点に着眼し、作製したTTL測定装置、過渡特性測定システムを用いて、捕獲準位、パルス電圧印加時における発行輝度及び、伝導電流の過渡特性を測定する。その結果より、CaS:Eu交流薄膜EL素子におけるEu-O複合中心の形成による発光輝度増強機構を解明する。
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