研究概要 |
今年度は、アルカリ珪酸塩ガラスにおいて,亀裂先端の応力場強度と亀裂伸長速度を測定し,臨界応力以下でのガラスの破壊現象のうち,特に水分等の環境の影響を受けない高速度領域の亀裂伸長挙動の評価を行った.その結果,以下に示す成果を得た. 1.新規な測定法により,第3領域と呼ばれる高速度領域の亀裂伸長挙動が,再現性よく,また定量的に測定できることを示した.本研究では,複雑な試料加工を必要とせず,圧縮応力を負荷することによって安定な亀裂を発生させることができるDCDC試験片を用い,さらにビデオレコーダーにより亀裂伸長挙動をコマ取り撮影し,その後解析するという手法により,簡便な高速度領域の亀裂伸長観察法を確立した. 2.市販のソーダ石灰ガラスとナトリウム含有量の異なるソーダ珪酸塩ガラスについて,第3領域の亀裂伸長観察を行い,ガラス中の非架橋酸素の増加と共に,第3領域の亀裂伸長曲線の傾きが減少することがわかった.すなわち,ガラスの破壊現象において,破局的な破壊に至る前に,速度依存性をもつエネルギーを散逸過程が存在し,その速度依存性は,ガラスの非架橋酸素の増加と共に増大することが明らかとなった. 以上のことは,ガラスの静的疲労の内的要因が,ガラスのミクロな構造に関係していることを示唆しており,新規なガラス材料の開発に有効な設計指針となると考える.今後は,衝撃波により亀裂伝播面を変調させ,その変調周期から亀裂伸長速度を求める方法を用いて,より高速度の亀裂伸長観察の測定法を確立し,破局的な破壊に至る直前のガラスの破壊現象について詳細な考察を行う予定である.
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