1.ラマン分光法を用いてCeO_2系材料内部の酸素ポテンシャルを評価できることが分かった CeO_2系材料は低原子価酸化物の置換固溶によって、あるいは高温、還元雰囲気におけるCeO_2自身の還元によって酸素空孔を生ずる。酸索空孔が導入されるとラマンスペクトルにおいてCeO_2の基本振動バンドに加えて新たなモードが観測されることから、CeO_2-Sm_2O_3材料についてこれらのピーク面積比から酸素空孔量を評価することを検討した。すると面積比はSmの固溶量に比例し、また試料の還元が起こり始める酸素分圧以下で、面績比の対数と酸索分圧の対数は直線関係にあることを見出した。よってラマン分光法によってCeO_2系材料内部の全酸素空孔量を評価できることが分かった。また試料還元に伴なって導入される酸素空孔量は組成、温度が決まれば酸素分圧によって決定されるため、この測定により試料のもつ酸素ポテンシャルを評価できることが分かった。 2.CeO_2系電解質を用いた燃料電池において発電効率が低下する原因が電子電流の短絡であることを実証した 前節で得られた知見をもとに空気および燃料の隔壁としてCeO_2系材料を用いた際に内部に生ずる酸索ポテンシャル分布をラマン分光測定から評価したところ、低酸素ポテンシャル領域が試料のほとんどを占め、ポテンシャル勾配は空気側近傍の狭い領域で見られることが分かった。このことからCeO_2系材料が低酸素ポテンシャル(還元雰囲気)で試料還元に伴なって発現する電子伝導性が空気側のすぐ近くまで広がっているということを実験によって初めて確かめた。これが原因で電子電流の短絡が容易に起こり得、発電効率が低下すると考えられる。 今後、電極材料の影響、通電(発電)時の酸素ポテンシャル分布に及ぼす影響を詳細に検討し、CeO_2系材料を燃料電池電解質に応用するための指針を得る。
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