PbTe系熱電材料の傾斜機能化(FGM化)は、熱電性能の向上に有効であり、この材料が従来もっている変換効率を飛躍的に高める可能性を秘めている。しかしながら、異なるキャリア濃度をもつ材料の接合や電極の接合には拡散接合が用いられると考えられ、そのとき素子は1000K以上の高温まで昇温することが必要となる。申請者らはn型PbTe系熱電材料において703K以上の昇温により、電気抵抗率の温度依存性に著しい履歴が生じることを指摘してきた。本研究はそのメカニズムの解明とともに、抑制方法の確立を目的としている。 そこで、今年度はAl_2O_3粉末やSiO_2粉末をn型PbTeの周囲に充填することで構成元素やドーパントの試料表面からの解離を抑制できるのではと考え、その効果の検証を行った。 その結果、これらの粉末充填が熱電特性の熱履歴の抑制に効果的に作用することがわかった。特に、Al_2O_3粉末を充填した場合、電気抵抗率の温度履歴は703Kまでの昇温前後で1%以下にまで抑制することができた。これは、充填粉末が試料表面のコーティングのように作用し、蒸気圧の高い構成元素の解離を抑制したためであると考えられる。しかしながら、充填粉末が高温度領域においてリ-ド線や熱電対と反応し、これらに致命的なダメ-ジを与えることも明らかになった。来年度は粉末充填下の高温においても熱電特性を安定して評価可能な測定方法を確立するとともに、粉末充填効果についてさらに詳細に調べていく予定である。
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