研究概要 |
PbTe系熱電材料の傾斜機能化(FGM化)は、熱電性能の向上に有効であり、この材料が従来もっている変換効率を飛躍的に高める可能性を秘めている。しかしながら、異なるキャリア濃度をもつ材料の接合や電極の接合には拡散接合が用いられると考えられ、そのとき素子は1000K以上の高温まで昇温することが必要となる。申請者らはn型PbTe系熱電材料において703K以上の昇温により、電気抵抗率の温度依存性に著しい履歴が生じることを指摘してきた。本研究はそのメカニズムの解明とともに、抑制方法の確立を目的としている。昨年度は試料全体をアルミナ粉で充填した容器内に収める方法により,高温においても構成成分の昇華が抑制された結果,比抵抗の温度依存性は繰り返し測定による履歴幅を1%以下にまで減少することができた.しかしながらこの手法によっても800K以上の高温での熱履歴抑制は難しい。これらの結果から、高真空排気(10^<-5>Torr以下)の可能な高温用電気的特性測定装置を構成した。また,熱的安定性を考慮し,上限温度は800Kまでとした。これ以上の高温での測定よりもむしろ低温での各種パラメータの測定精度を上げ,これをもとに高温度側を外挿した。 その結果,PbTe-SnTe系固溶体の熱伝導率の格子成分κ_<ph>は、SnTeの含有量とともに減少し,いわゆる"alloying effect"が確認された。また,もっともκ_<ph>が低下したPb_<0.75>Sn_<0.25>Teでは200K以上ではΓ^1の温度依存性を示し、ウムクラップ散乱が支配的であることがわかった。また、Pb_<0.5>Sn_<0.5T>eではΓ^<3.8>の温度依存性をもつことを明らかにした。これらの結果をもとに,この化合物の熱電性能指数を見積もった結果,Pb_<0.5>Sn_<0.5>Teは700Kにおいて2×10^<-3>K^<-1>の高い値を示し,p型熱電材料として有望であることを示した.
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