研究概要 |
結晶粒の微細化は材料の強度と延性を同時に改善するための有効な手法である.しかし,高温下では,結晶粒成長が進行し組織が粗大になるため,微細な組織を維持するには,分散粒子や第2相を利用して結晶粒成長を抑制する必要がある.これまで,粒子分散組織における結晶粒成長の遅滞は,Zenerの式により検討されてきたが,組織形態が大きく異なる2相混合組織や,さらに多相化した3相組織における結晶粒径を予測するには,より詳細な解析を必要とする.本研究では,それぞれの組織の特徴を考慮した結晶粒径の相関式を導出し,2相混合組織および3相組織の結晶粒成長の計算機シミュレーションにより相関式の妥当性を検討した. (1)2相混合組織 本研究グループでは,粒子分散組織における粒子によるピン止めによる粒界のたわみを見積もり,相関式R=4r/3f^<2/3>を導出した.一方,2相混合組織は,分散組織とは全く異なる組織形態を有するため,Zener流の解析の適用には限界がある.結晶粒のサイズを表すパラメータR=R_α+R_βが一定値を持つ条件の下,α十β2相混合組織における粒界の面積S=3(f_α/R_α+f_β/R_β)/2が最小になるような粒径の関係をラグランジェの未定係数法により求め,相関式R_α・f_α^<-1/2>=R_β・f_β^<-1/2>を導いた。この式は,2相混合組織における主相と副相の粒径相関式を示し,今回行ったシミュレーションの結果をよく再現している. (2)3相組織 2相混合組織中に微細な第3相粒子が分散している3相組織の場合には,主相の粒径は副相による拘束とともに,分散粒子によるビン止めの影響を受けるため,両方の効果を考慮する必要がある.シミュレーションの結果,副相の分率が十分大きい場合には,主相の粒径は2相混合組織の相関式で表されるが,副相の分率が小さく,さらに,分散粒子によるピン止めが大きい場合には分散組織の相関式によって母相の粒径が定まることが明らかになった.
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