本研究は最近物理学・化学・材料工学の広範な分野で重要な研究テーマとなっている3次元磁性人工格子の1つのドメインを記録の単位として磁性媒体を構成し、超高密度の記録媒体の実現を目指したものである。この3次元人工格子を記録媒体に用いることにより、従来1bitずつ記録していた手法から多bitを記録領域に記録する方法に改良し、高密度化、高転送レート化を図る。そのためには、その記録媒体としての材料化の可能性、作製プロセスの決定、熱的安定性、外磁場に対する応答性を探り、記録媒体の画期的なブレークスルーを目指している。今回、この多値記録の記録プロセスのシミュレーションを行った。 大量のデータを格納するために超高密度記録達成のための研究は多数なされている。最近では磁気薄膜を使い、2次元表面での密度を上げる試みがされている。また高密度記録の実現のために多値記録を用いる研究もある。本研究では多値記録が磁気的異方性を含む2次元、3次元人工格子の配置により簡単に達成できることを示した。さらに、この新しい手法を使い、超高密度記録が達成可能なものであることを示した。磁性人工格子中のスピン配列は磁気双極子の相互作用を含む古典的ハイゼンベルグ型の非線形方程式を解くことにより求めた。磁性人工格子のHysteresis loopを様々な磁気的配置において得た。その結果は超高密度記録メディアとしての可能性を示すものであった。磁気的性質および多値記録の評価はHysteresis loopを用いて行った。その結果、ドメインを多数もつ3次元の場合は2次元よりも多値のbit数が増えて、より高密度になる可能性が示された。 熱的安定性など実際の使用を考慮したケースでのシミュレーションが欠如しているため、現在までには3次元磁性人工格子を用いた製品は実用化されていないが、今後はそれを克服していく予定である。
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