新軽量耐熱材料として、それ自体、また構成相としての役割が期待されるTiAl(γ)相について、Al-rich領域にて形成される長周期Al_5Ti_3型規則相に注目し、単結晶を用いてその変形挙動を明らかにした。Al_5Ti_3型規則相の規則度、体積率、サイズはAl濃度ならびに温度に強く依存し、例えば、As grown状態にてTi-54.7at.%Al結晶では短範囲規則構造を、Ti-58.0at.%Al結晶では長範囲規則構造とAl濃度の増加とともにその規則性は向上した。さらに、As grown状態にて長範囲規則構造を示したTi-58.0at.%Al結晶であっても、800℃以上の温度域にてその安定性は低下し、そのサイズ、体積率は急速に減少した。Al_5Ti_3型規則相の存在形態は、活動すべり系に依存し、Al-rich TiAl変形挙動に強い影響を与えた。TiAlにおける主要な活動すべり系である{111}1/2<110](普通転位)、{111}<101](超格子転位)、{111}1/6<112](変形双晶)は、Al_5Ti_3型規則相の発達に伴い、いずれも急速にその活動が困難になるものの、その度合いはすべり系に強く依存した。例えば、そのCRSSは超格子転位が活動する場合に比べ、普通転位ならびに変形双晶において急速に上昇した。この原因は、Al_5Ti_3型規則相内に形成される面欠陥のエネルギーの大小で説明された。さらに、普通転位の活動に注目した場合には、Al_5Ti_3型規則相の発達に対応し、異常強化挙動に変化が認められた。このことは、Al_5Ti_3型規則相内に形成される、各結晶面におけるAPBエネルギーの違いと密接に関係し、この結果をもとに、普通転位活動時の異常強化に対する新たなメカニズムが提案された。
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