代表者らは、焼結体熱電変換材料の(特に粒界・界面における)微細構造を制御することにより、それらの熱電性能の改善を目指している。今年度は、シリコンゲルマニウム(SiGe)焼結体に対して、ポテンシャル障壁散乱効果によるゼーベック係数の増大を期待して、粒界に形成されるポテンシャル障壁の制御を試みた。 粒界ポテンシャルの制御には、ヘテロ構造でのバンドオフセットを利用した。具体的には次のようにして試料を作製した。焼結前に原料粉体に対してSiH_4あるいはGeH_4ガスのプラズマ処理中で処理を施し、その表面にSiあるいはGeのコーティング層を形成した。引き続きその粉体を焼結した。コーティング層は焼結後も粒界に留まり、ヘテロ構造をもつ焼結体を得ることができる。粒界にポテンシャル障壁が形成されると予測される、p-SiGe:B/i-Geおよびp-SiGe:B/n-Si(ここで、X/Y:Xは母体でYは粒界層の意であり、p-、i-、n-はそれぞれp型、真性、n型を表す)の2つの系に対して実験を行った。 得られた焼結体のゼーベック係数を測定・評価した。それらは、処理を施していない焼結体のゼーベック係数よりも大きな値を示した。ゼーベック係数の差分は、室温では20〜40μV K^<-1>であり、低温ほど大きくなった。この傾向は、ポテンシャル障壁散乱効果で予想されるものと一致する。 そこで、粒界ポテンシャル障壁を仮定してモデルを立てて、処理した試料のゼーベック係数の温度特性のフィッティングを行った。その結果、今回作製したp-SiGe:B/i-Geおよびp-SiGe:B/n-Siに対して、その粒界ポテンシャル障壁の高さはそれぞれ60 meVおよび45 meVであることがわかった。
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