研究概要 |
本研究では軸部と歯部が異なる材料からなる複合材歯形状部品を閉塞鍛造により成形する際の変形挙動について調査することが目的である. 本年度は鉛,純アルミニウム(A1050),アルミニウム合金(A5056)の3種類を用いて主に冷間にて実験を行った.アルミニウムにおいては供試材のまま,および焼きなまし処理を行ったものを用意し,鉛と合わせて計5種類の降伏応力の異なる材料を用意した.実用的な観点から,歯部となる材料(以後リング材と呼ぶ)が軸部となる材料(以後コア材と呼ぶ)より平均降伏応力が高い組み合わせにて成形実験を行った.成形品の形状は直径30mmの円筒部に刃底幅10mm,歯先幅7.5mm,歯高5mmの台形歯が4枚付いた平歯車状の部品である.予備実験の結果より,歯高が10mmの場合充満度が高くなるとリングが歯元で破断する現象が見られたため,歯高は5mmとした.また,片押しでのみ実験を行った. 実験結果をリング材の平均降伏応力とコア材の平均降伏応力の比(降伏応力比)で整理し以下の知見を得た. 降伏応力比がほぼ同じ場合,降伏応力の大小によらず外形形状の変化は類似したものとなる.降伏応力比が1に近い場合,試験片の上押えに接触する面ではリングとコアの間に窪みを生じるが,降伏応力比が大きい場合はそのような欠陥は生じない.しかし,充満が進むと歯元で割れが生じる場合がある. 健全な成形を行うことができる降伏応力比は,リング材の降伏応力が高くなると小さくなる傾向がある.
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