Pbの持つ有毒性のためにPbを含まない新しいはんだ材料の創製が望まれている。最近ではAg-Sn合金を初めとする様々な合金系ではんだ材料の試作が行われているが、必ずしもその融点が従来のはんだに比べて低下していないことが問題となっている。融点を降下させるために一般的には、その組成の最適化と第三元素の添加が試みられている。またそれとは全く異なり、同じ合金系・同じ組成でも急冷凝固やMAなどにより非平衡状態にすることにより、平衡状態の融点よりもずっと低温で融解することがある。 本研究では従来のSn-Pb共晶はんだ合金およびSn-Ag系Pbフリーはんだ合金中に非平衡にCuコアを含ませたはんだボールを作製し、パッド材との接合性についてCuコアを有さない場合との比較を試みた。 Cuコアを有さない場合、Sn-PbおよびSn-Agはんだ両者ともにリフロー時にはんだ中のSnとパッド上にメッキしたNiとの間に反応層が形成した。この反応層は平衡状態図には現れないNiSn3準安定相より構成されていることがわかった。更に423Kで保持すると反応層の成長が見られた。 一方cuコアが存在する場合、Sn-PbおよびSn-Agはんだ両者ともにリフロー中にはんだ層内に溶解したCuがSnよりも早くパッド上にメッキしたNiと反応し、平衡層のCu6Sn5相を形成した。リフロー後の反応層厚さはCuを有さない場合とほとんど変化は見られないが、423Kでの保持に伴う反応層の成長速度は130%程度であった。これはリフロー時に形成したCu6Sn5が反応層の成長速度の早いSnとNiの反応を阻害したためであると考えられる。 この反応層の成長速度の違いにより、423Kでの保持に伴う継手強度の劣化はCuコアを有した場合ほとんど見られなくなることが明らかとなった。
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