本研究では、鋼の製造プロセスである連続鋳造において、連鋳鋳片の品質を大きく左右する鋳型内の潤滑現象を明らかにすることを目的としている。その中でも特に、鋳型/鋳片間に流れ込むモ-ルドパウダーの潤滑挙動および連鋳鋳片に生成するオシレーションマークの生成をデジタルビデオカメラを用いてメニスカス近傍を直接観察することによって、諸現象を明らかにすることを目的とした。 研究開始の本年度は、連続鋳造を模擬した実験装置を製作し、鋳型内のモ-ルドパウダーの潤滑挙動を中心に実験を行った。 メタルにはSn-Pb低融点合金、擬似モ-ルドパウダーにはステアリン酸を用いて鋳造実験を行った。モ-ルドパウダーの潤滑挙動は、ステアリン酸に混ぜたAl_2O_3粉末のトレーサーの動きを追いかけることによって定量化を行った。 また鋳型/鋳片間において生じる摩擦力の測定のために、鋳型の重量をロードセルによって測定することによって、摩擦力を算出した。 また鋳片の品質の指標であるオシレーションマーク深さを測定した。 その結果、デジタルビデオカメラによる直接観察からは、メニスカスより6〜7mm上の部分におけるパウダーは、鋳型と同周期・同位相・同方向の速度ベクトルで動いていること、また鋳型/鋳片の隙間においては、tp期、特に鋳型上昇速度が最大になる時を中心に流入していることが観察された。 また、鋳型/鋳片間の潤滑挙動の指標として用いた鋳型/鋳片間の摩擦力を測定した結果、同じ振幅で比較すると、オシレーションの振動数が減少する、つまりtp時間が増加するにつれて、摩擦力が減少する傾向が見られた。 また、同じ振動数で振幅を変化させた実験においては、振幅を大きくすると摩擦力が減少するのが見られた。 また、オシレーションマーク深さについては、従来の知見通り、tn時間の増加に伴い、オシレーションマーク深さが増加する結果が得られた。 また、摩擦力の結果と同じ通り、振幅が大きくなるにつれて、オシレーションマーク深さが減少する傾向がみられた。
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