これまで、グロー放電プラズマの診断は発光分光測定などの可視・紫外光の測定を中心に行われてきた。 そこで、高電圧のグロー放電に対してX線測定を行い、プラズマプロセスの理解に応用した。 具体的にはヘリウムを放電ガスとするグロー放電管において最大10kVの電圧を印可し、AlやBeの薄膜をX線窓材としてX線測定を行った。 その結果、グロー放電管からX線が観測された。 これは陰極表面から発生した電子が高電圧によって加速され、プラズマ中の原子・分子と相互作用することなく通り抜け、X線窓材に衝突しX線を励起・発生させたものであることが分かった。 つまり、X線が観測されたことはX線を励起し得るほどの高エネルギー電子が存在していることを意味するとともに、X線測定がこれらプラズマ中の高エネルギー電子の研究に有効であることを示している。 この現象を積極的に電子源やX線源として利用することを考え、これらについても論文として報告した。 従来の電子源やX線源は超高真空を必要とするが、グロー放電電子源・X線源は低圧下で作動し、小型でターゲットを自在に交換できる利点がある。 さらに、本研究費により小型の可視・紫外分光器を購入し、高電圧印加のヘリウムやアルゴンプラズマに対して分光測定を行った。 特にヘリウムプラズマは準安定エネルギー準位が比較的高いためアルゴンプラズマでは励起できない発光線が多数観測された。 今後はX線を斜入射でプラズマに照射し、プラズマプロセスのその場測定に応用していく計画である。
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