凝固は界面を介して液相、固相などの多相が混在する現象であり、それぞれの相の物理的、化学的な特性の相異に対して、外部から何らかのエネルギーを投入することによって凝固組織の制御が可能となる。特に、電磁気学的な方法は、磁化率と磁場、電気伝導度と電流、誘電率と電場と考えられ、応用範囲の広さ、制御性からも組織制御の可能性は大きい。本研究は、特に固相-液体、液体-液体が同時に存在し、それぞれの誘電率、電気伝導度の差異が比較的大きいと思われるBi-Ga偏晶合金に着目し、あらかじめ調整された、いくつかの組成の合金を電流および強電場印加のもとて急冷あるいは一方向凝固させ、凝固組織を定量的に評価し、偏晶反応そのものへの電流および電場の影響を明らかにした。Biは半金属といっても、金属相との誘電率の差異は小さく、8000Vまでの電場ではGa液滴がBi固相に接触しながら核生成、成長する偏晶組成においてのみ電場の影響が現れた。電場により誘電率の異なる異相界面に電荷が現れ、Bi固相とGa液相の界面張力は増加する。この結果、凝固全面に生成するGa液滴は固相に取り込まれにくくなり、成長、合体を続け、取り込まれる粒のサイズは大きくなる。観察結果もその事実を明確に示している。この効果を確かめるために、急速凝固実験を行った結果、過冷によりBi固相粒子が液相中に晶出する60%Ga合金では電場の印加により過冷度が増加すること、晶出粒子のサイズが極端に細かくなることが見いだされた。これはBi固相とGa液相の界面張力の増加により核生成の活性化エネルギーが高くなったためであると考えられ、電場の影響はBi固相とGa液相間で現れることが明かとなった。また、電流の印加では、Bi液相とGa液相間でも十分の電気伝導度の差異があるため、10A程度の電流でも、分散液滴の粒子のサイズに効果が現れた。
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