化合物半導体のゾーンメルト(ZM)法による溶液成長は、その低温成長温度と、溶媒による原料中の不純物のゲッタリングのために、結晶の高純度化が図れる。その反面、成長温度を下げると包有物の発生など特有の欠陥が発生し易くなり、その原因の1つに成長界面前方での組成的過冷却が指摘されている。半導体の溶液の場合、制御された強制撹拌により、成長界面前方の濃度勾配を減少させ界面形態を安定化させることが出来るはずである。現在、電磁石による振動磁場の強制撹拌法への応用が注目を浴びているものの、未だ組成的過冷却理論の観点から界面の安定性を定量的に議論するには至っていない。本研究は、安定な軸対称流を発生する垂直振動磁場とその場観察の併用によりZM法による溶液成長での成長条件と成長界面形態の関係を明らかにすることを通して、より低温でのZM法による成長プロセスの確立を目指すことを目的としている。 平成9年度は、振動磁場発生装置、加熱炉、そしてその場観察装置を作製し、長時間にわたるGaPのTHM成長過程のその場観察に成功した。そして、得られた結晶の切断面の組織観察から、振動磁場印加の場合、ボイドの軽減・成長界面の平坦化が見られ、MHD効果による対流の安定化が確認された。また、モデル実験としてPbxSn1-xTeの溶液成長を行い、得られた結晶中の組成分布をEDSにより調べた結果、振動磁場印加の場合、完全混合モデルに基づいた予測値と極めて良い一致が見られ、また、Snの偏析が軽減された。
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