本研究は、垂直振動磁場とその場観察の併用によりZM法による溶液成長での成長条件と成長界面形態の関係を明らかにすることを目指した。方法論として振動磁場発生装置、加熱炉、そしてその場観察装置を試作し、長時間にわたるGaP、CdTeのTHM成長過程のその場観察に成功した。 CdTe結晶成長中に蒸気圧の高いTeの気泡が固液界面に現れる様子が観察され、成長に伴うそれらの移動軌跡がボイドを形成していくことが明らかになった。また、振動磁場の印加により気泡の発生が抑制されたことから、ローレンツ力による強制対流により、(1)気泡が除去された、(2)液相内Te濃度が界面のごく近傍で均一化された、ことが考えられる。また、GaP結晶成長の場合、振動磁場の印加によりメルトバックを伴って界面が安定化する様子が観察された。 ローレンツ力が対流に与える影響を調べる為に、成分間の密度差が小さいGa-doped Ge、及び密度差が大きいPb1-xSnxTeの結晶成長を行った結果、結晶中のGa、Sn濃度分布は磁場を考慮したスケーリング解析に基づいた濃度境界層モデルの結果と良く一致した。また、それぞれの場合のレイノルズ数を解析で求めると、50Hzの振動磁場の場合、前者は約5mTで層流から乱流に遷移し、後者は少なくとも12mT程度では層流の状態であったことが推測された。 以上の結果から、振動磁場はマクロな液相内濃度の均一化、温度分布の変化を伴った界面の平坦化をもたらし、特に蒸気圧の高い成分を含む場合は固液界面で発生する気泡の付着を抑制することが明らかになった。また、気泡の発生が無い場合、固液界面前方の濃度分布は濃度境界層モデルで良く近似出来ることが示された。
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