研究概要 |
本研究では、微小領域の超高速放射温度計アレイを構築し、これを用いて大過冷を利用した高速結晶成長、新結晶成長メカニズム、新物質合成にシステマチックにアプローチすることを目的とする。本年度に得られた主な結果を列挙する。 1.過渡現象観察用微小多点高速赤外放射温度計測システムの構築 大過冷時の結晶成長速度は10〜1000m/sにも達する。これを測定するために、レンズ、InGaAsフォトダイオード、高速オシロスコープを用い、浮遊液滴表面の温度を1msの速度で検出可能な、多点高速赤外放射温度計を構築した。 2.Si,Ge半導体の大過冷凝固における過渡現象の観察と成長様式の決定 上記装置を用い,Si,Ge半導体の液滴の結晶成長速度を測定した。従来大過冷下での半導体の結晶成長は、△T^*=200度程度に、沿面成長から金属的連続成長へ遷移する臨界過冷度があり、その金属的成長は大きな界面過冷度を伴った理論で説明され、半導体特有の現象とされていたが、本研究により、これは放射率の固/液の差より過冷度を大きく見積もり過ぎていたためであり、少なくともSiとGeにおいては半導体でも低い過冷度(<<50K)より従来の金属におけるデンドライト成長理論とよくあう成長速度で成長していることが明らかになった。 3.NdBa_2Cu_3O_<7-x>の大過冷液体からの調和成長 酸化物超伝導体であるNdBa_2Cu_3O_<7-x>は包晶相であるため、成長に長時間を要し、実用化の根本的障害となっていた。本研究では融液を包晶温度以下まで過冷させることにより、液相から直接に数秒で体積分率90%以上の数ミリの試料を調和成長させることができた。包晶相の調和成長は他の系でも例がなくこのことからも非常に画期的なことである。 4.過冷液体の物性値測定 レイリー振動解析等非接触式手法を用いてSi,Ge,Si-Ge alloyの融液や過冷融液の表面張力を測定した。
|