グロー放電は通常 数Torr程度の減圧下でしか発生させることができない。このためグロー放電を利用した表面改質やCVDなどのプロセスは真空装置を必要とし、ランニングコストがかかったり、また真空中に持ち込めない材料に適用できない等の問題点がある。本研究室では熱料電池に使われる固定電池解質を電極として用いることで大気圧グロー放電を実現することに成功している。この大気圧グロー放電における放電電流の向上を目指し、この放電の機構を調べることを目的とした。本年度の研究で、以下の結果が得られた。 (1)電極素材について 固体電解質、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)以外でも、金・ニケッルの金属およびITO電極では大気圧のグロー放電を起こせることがわかった。長時間安定性については、YSZがもっとも優れていた。 (2)大気圧放電の条件 ヘルウムガスにおいては電極間隔2mm、ガス流速0.9〜6.0L/min.、電圧400Vの条件で最大電流密度は30μA/cm^2のグロー放電を起こすことができた。また、ネオンガスにおいても流速2.7L/min、電極間隔2.3mmで放電が確認できた。しかしながら、アルゴンガス、窒素、空気においては、観察できなかった。 (3)放電発光スペクトル分析 YSZ-ITO電極において、放電の発光を光ファイバを介して冷却CCD付きモノクロメータで分析した。主としてHe^+、O^+の発光が確認されたが、電極のスパッタリングと見られる発光スペクトルも見られた。 以上、グロー放電について発生条件についての知見が得られた。しかしながら、電流密度は30μA/cm^2とレーザ発振には小さすぎる。さらなる電流密度増加の条件を探るとともに、放電メカニズムについて検討が必要である。
|