繊維強化複合材料の内部に例えば光ファイバーなどを用いて、材料の応力状態や温度等の情報を取り出せるようにしようとする「スマートマテリアル」の研究が広く精力的に行われている。本研究はこの一つとして、化学プラントに用いられる装置材料としての耐食FRPに光ファイバーを埋め込んで、FRPの化学変化をモニタリングする方法の確立を目的とした。 昨年度は、光ファイバーと赤外分光分析装置(FT-IR)とを組み合わせて、光ファイバー内の多重反射を用いた官能基の分光分析を試みた。赤外領域の吸収が少ないカルコゲナイト製の特殊ファイバーを用いて、何とか分光装置に透過の認められるモジュールの作製に成功した。本年度はこれを受けて、樹脂あるいは典型的な赤外吸収を持ついくつかの溶媒について測定実験を行い、モジュール内のファイバー本数の効果を系統的に行ったところ、作製したモジュールの寸法では5本以上のファイバーを使うことにより赤外吸収スペクトルを得られることをえた。不飽和ポリエステル樹脂のスペクトルあるいはこれを水酸化ナトリウム水溶液に浸せきしたものについてのスペクトル変化はうまく得ることができなかったが、こう行った光ファイバーを使うことでFRP内部の化学変化を検知することの可能性を示すことができた。この光ファイバーを使ったFRPは、材料の腐食をオンラインでモニタリングすることができるため、機器の停止を伴わすとも劣化の診断を常時行うことができ、省力かつ信頼性向上が期待できる。
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