本年度は逆ミセル系で調製された超微粒子の粒子径分布測定を検討した。粒子径分布は基板上に固定化された粒子の顕微鏡観察で得られるが、逆ミセル系で調製された粒子の場合、界面活性剤からの分離が必要である。 対象粒子は紫外可視吸収スペクトルの測定で平均粒子径が推算できる硫化カドミウム、基板はマイカとして原子間力顕微鏡による観察を行った。超微粒子の基板への固定化法として、1.基板表面を粒子と親和性の高いチオール類で修飾し、粒子を含有する逆ミセル溶液を接触させて粒子を固定化し、その後界面活性剤を洗浄する方法、2.粒子表面をチオール類で被覆してから界面活性剤と分離し、それを基板上に固定化する手法を検討した。 1.についてはメルカプトシラン化合物を検討したが、修飾された基板に微小な凹凸が現れ、その上に固定化した粒子の粒子径分布の正確な評価は困難であると結論した。2.ではまず、被覆された粒子を逆ミセルから極性溶媒中へ移動させ、混入した界面活性剤の除去を他の溶媒への抽出や基板の熱処理を組み合わせて検討したが、粒子と共に界面活性剤の会合体も観察された。次に、被覆されて疎水化した超微粒子を含有する逆ミセル溶液を水面に滴下し、水面に浮かんだ粒子を基板に移す方法を検討した。界面活性剤は水に溶解し、基板上に界面活性剤の会合体はほとんど見られなかった。そして、粒子を含有するサンプルの場合は高さ1‐3nmの突起が観察され、さらに突起の密度と高さはサンプルの粒子濃度と平均粒子径に対応して変化したことから、超微粒子が基板上に固定化できたと考えている。引き続きこの手法で固定化された粒子を電子顕微鏡で観察し、これを確認する。 来年度は当初予定どおり、この粒子固定化手法を用いて粒子径分布を測定し、粒子調製条件との相関を調べ、平均粒子径を基にした粒子生成モデルを拡張して、粒子径分布を取り扱うことのできるモデルの構築を目指す。
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