半導体製造などの先端産業の分野では、ガス中浮遊粒子状物質による局所空間におけるコンタミネーションの防止の必要性が高まっている。一方、微粒子の高精度な粒径測定法である静電分級法では、粒子の高効率の荷電が望まれている。そこで本研究では、閉鎖空間内の粒子の荷電・捕集手法として最近提案されたUV/光電子法を、粒子の連続的な捕集装置や高効率荷電装置として実用化することを目的とした。本年度の主な研究内容と成果は以下のとおりである。 1)電極に囲まれた環状の流路を有し、さらに紫外線照射によって光電子を放出する金の薄膜によって環状部の負イオンを生成できる、管型のUV/光電子装置を製作した。イオン電流の計測によって環状部の負イオン濃度を求めたところ、10^<12>〜10^<13>ions/m^3の高濃度でイオンが発生できることがわかった。 2)上記管型装置に、粒子径が揃った無帯電のサブミクロンエアロゾル試験粒子を導入し、微粒子の捕集効率を実験的に求めた。その結果、粒子のサイズ、供給ガスの流量および圧力、装置内の電場強度などに対する捕集効率の依存性を明らかにできた。また、イオン濃度はガスの流量や圧力、電場強度にほとんど依存しないこともわかった。 3)装置内に導入された微粒子に挙動を支配する、イオンの生成速度、粒子とイオンの衝突による荷電、ならびに気流、拡散、静電気力による輸送と装置の内壁面への沈着を表現するモデルを導いた。モデルを記述する基礎式に実験条件を考慮して数値計算により解析したところ、実験でみられた、各種条件による捕集効率の変化を、定量的に予測することができた。これにより、装置の設計指針を理論的に行うことが可能になり、次年度予定している、荷電装置としての装置の最適化に対して、有用な知見が得られた。
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