半導体製造などの先端産業の分野では、浮遊粒子状物質による局所空間におけるコンタミネーションの防止の必要性がますます高まっている。一方、微粒子の高精度粒径測定法である静電分級法では、高効率の微粒子荷電が望まれている。そこで本研究は、閉鎖空間内の粒子の荷電・捕集手法として提案されたUV/光電子法を、粒子の連続的な捕集装置や高効率荷電装置として実用化することを目的とした。 昨年度までに、金の薄膜への紫外光の照射によって光電子を放出させることで気中に負イオンを発生させる装置を製作して、イオンの発生と微粒子の荷電・静電捕集を実験と理論の両面から検討してきた。その結果、発生するイオン濃度を明らかにし、また実験で求められた微粒子の荷電効率ならびに装置による除去効率を説明できる理論モデルが提示できた。すなわち、本手法による微粒子荷電と除去についてその有効性を基礎的に確認することができた。そこで本年度は、実際に粒子の汚染が問題となる場への本手法の適用を検討した。まず、半導体材料製造装置でしばしばみられる減圧条件や高温条件を対象として、本手法による微粒子荷電・除去を実験で検討した。約10torrから大気圧の圧力、室温から約200℃の温度の条件下で得られた実験結果から、本手法がこれらの条件下でも適用可能であることを示すことができた。また、半導体薄膜成膜用の熱CVD反応器に本手法による微粒子荷電・除去装置を小型ユニット化して設置した装置も製作し、成膜基板上に浮遊する微粒子の濃度を減少させられることも明らかにした。以上の研究により、本手法による実用的な粒子荷電・除去装置を、理論計算による設計にもとづいて開発できる指針が得られた。
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