研究概要 |
1.複数の結晶形を有するアミノ酸結晶の創製 アミノ酸の結晶には複数の結晶構造(分子配列のしかた)が存在し,構造によって,体内に投与した際の吸収速度(薬理効果)に差が生ずるなどの問題がある。従来は目的の構造体だけを作りわける努力がなされてきたが,いずれの結晶構造にも長所と短所が必ず存在しているのも事実である。そこで,お互いの欠点を補うべく,複数の構造体からなる固体の作成法について検討した。 モデル物質としてグルタミン酸結晶を取り上げた。グルタミン酸には高溶解性のα晶と低溶解性のβ晶が存在している。両晶の同時析出が可能と思われる条件下で結晶を作成し,出来上がった結晶の中を偏光顕微鏡で観察したところ,固体全体としてはα晶の形をしているのであるが,その中には,β晶も混在していた。つまり,構造の異なる結晶が共存しながら,きちんとした外形を有する固体をつくることが容易であることが分かった。 2.複数の異性体分子から構成されるアミノ酸結晶の創製 分子の立体異性によっても薬理効果が異なる。ここでは,モデル物質として,アミノ酸(メチオニン)のD体とL体分子からなる複合結晶の生成法について検討した。まずDL比1:1の溶液を作成し,撹拌下で結晶化させた。この溶液から,1:1の結晶を析出させるの容易である。本研究では任意の配合比の固体を生成することを目的としてどちらか一方を優先的に結晶化させ(ジアステレオマ法)つつもう一方の分子を混入させる方法を検討した。その結果,撹拌の有無によって配合比が大きく異なることがわかった。 3.適度なミネラル成分を包含した塩化ナトリウム結晶の創製 結晶化装置内で塩化ナトリウム結晶が他の固体と衝突することによって,小さな胞有物が結晶の内部のあちこちに形成することが分かった。溶液に所望の成分を含ませておけば,結晶への導入が可能であろう。
|