研究概要 |
電気透析法による表面処理廃水のクローズド化に関する研究を行なうにあたり,今年度は市販陽イオン交換膜ならびに陰イオン交換膜を用いて電気透析を行い,鉛,錫などの金属および溶媒としてメッキ溶液に多量に存在するメタンスルホン酸の膜透過特性を調べた。 半田メッキ溶液を想定したメタンスルホン酸鉛-メタンスルホン酸系あるいはメタンスルホン酸錫-メタンスルホン酸系の溶液を用い,5室からなる回分循環型電気透析槽を用いて実験を行ったところ,鉛,錫などの金属は陽イオン交換膜のみを介して移動し,各金属は陽イオンとして脱塩濃縮されることが確かめられた。一方,メタンスルホン酸は,陰イオン交換膜の他に陽イオン交換膜をも一部透過する傾向が見られた。また,メッキ溶液中に含まれる界面活性剤などの添加剤による膜汚染の程度を調べる際の指標となる電気透析槽の電圧は,メタンスルホン酸の存在下においては一般的な強電解質を扱う場合に比べて高くなる傾向を示し,特に陰イオン交換膜間の電圧が高いことがわかった。この結果より,陰イオン交換膜では,メタンスルホン酸の存在による低度の膜汚染が生じていることが推測された。 この結果を基に,市販イオン交換膜を用いた電気透析法における脱塩・濃縮特性を調べるために,メタンスルホン酸の限界電流密度の測定を行った。その結果,限界電流密度はメタンスルホン酸の濃度,および液速度の増加とともに増加する傾向を示し,金属およびメタンスルホン酸の濃度が比較的高いメッキ溶液の原液,あるいは1次洗浄水を対象とした場合には,比較的高い電流密度の下での運転が可能であることが明らかになった。また,限界電流密度に関し,物質移動および流体力学的な観点から解析を行った結果,限界電流密度は物質移動に関するj因子及びSh,Re,Sc数などの無次元数を用いる相関式により,良好に推算できることが明らかになった。
|