本研究において、溶媒分離用フィリング重合膜のコンセプトを無機基材に応用し、有機・無機複合膜の開発を試みた。この膜は溶媒分離において、溶解選択性を有機充填ポリマーにより発現し、膜の膨潤を無機基材骨格により抑制することができる。無機基材を使用するため、高温での使用にも耐える分離膜となるはずである。 プラズマグラフト重合法により多孔性ガラス基材中の細孔をポリメチルアクリレートグラフト鎖で充填した膜の作製に成功した。プラズマを用いた改質において、無機多孔材料内の細孔表面にグラフト鎖を固定することに成功したのは、本研究が初めてである。本研究で発見したプラズマによる無機多孔材料へのフィリング重合は溶媒分離膜に限らず広い分野への応用が可能であろうと考えている。グラフト充填相の厚みは、基材細孔が小さいほど薄くなることが分かった。また、予め基材細孔表面に有機層を固定しておけば、より均一なグラフト重合層が形成できることも分かった。今後、重合機構を制御すれば薄膜化できることが示唆される。 作製した複合膜は、充填ポリマーの溶解性によりクロロホルム/ヘキサン分離において高いクロロホルム選択性を示し、無機基材の方が弾性力のある有機基材よりも膨潤抑制効果が高いことを示した。
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