界面活性剤修飾法による非水媒体中における酵素機能の変換

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09750841
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 後藤 雅宏 九州大学, 工学部, 助教授 (10211921)
• キーワード: 酵素 / 界面活性剤 / 生体触媒 / 有機溶媒 / 光学分割 / タンパク質 / バイオテクノロジー / 生物工学

研究概要

本研究は、界面活性剤の修飾によって、非水媒体中でも高活性を発現するような酵素複合体を創製することを目的として研究を展開した.
酵素は本来生体内触媒であるために、一般に水相中では安定に存在するが、有機溶媒中では急速に変性失活してしまうことが知られている。しかしながら、酵素を有機溶媒中で用いることができれば、疎水性の基質が使用でき、さらに加水分解酵素を逆反応(エステル合成やペプチド合成)の触媒として利用することが可能となる。また、酵素は非常に高い基質特異性を有しているため、特に生理活性物質の選択的な合成に対して大きな威力を発揮する。そこで本研究では、″非水媒体中で高活性を発現できるような界面活性剤-酵素複合体の調製法″を開発し、本酵素複合材料を利用した工学的応用技術を検討した。具体的には、3種類の全く異なる機能を有する酵素(リパーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ)を取り上げ、それぞれの酵素について界面活性剤との複合化を試みた。調製条件の最適化を行った後、適当なモデル反応系を選定し、非水媒体への可溶化、並びに酵素活性の保持について評価を行った。
本研究では、酵素複合体を用いた有用物質の光学分割としてメントールの不斉エステル化に着目した。
Candida cylindracea由来の被覆リパーゼを用いることによって、(-)ーメントールが非常に高い転化率でエステル化されることが明らかとなった。また、(-)体と(+)体に対する酵素活性の比較から100倍程度の速度差が得られ、非常に高い選択性で反応が進行することが明らかとなった。さらに、薬物のイブプロフェンの光学分割に被覆リパーゼを応用した結果、高効率で分割できることが示された。また、本研究で開発した酵素複合体を用いることにより、ステロイド類の位置特異的変換反応が可能であることも明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] M:Goto et al.: "Application of novel preparation method for surfactant-protease complex catalytically active" Biotechnology Progress. 13・5. 551-556 (1997)
• [文献書誌] M.Goto et al.: "Novel Preparation Method for Surfactant-Enzyme Complexes Utilising Water-in-Oil Emulsions" Biotechnology Bioengineering. 55・2. 455-460 (1997)
• [文献書誌] M.Goto et al.: "Enzymatic Polymerization catalized by Surfactant-Coated Lipases in Organic Media" Biotechnology Letters. 19・4. 307-309 (1997)
• [文献書誌] M.Goto et al.: "How is the selectivity determined in enzymatic reaction by surfactant-coated lipases" Biotechnology Progress. 13・4. 488-492 (1997)
• [文献書誌] M.Goto et al.: "Peroxidase Acivity and Stability of Surfactant-Heme Complex in Nonaqueous Media" Biotechnology Letters. 19・10. 1015-1018 (1997)
• [文献書誌] M.Goto et al.: "Preparation of surfactant-coated lipases utilizing molecular imprinting techniques" J.Fermentation and Bioengineering. 85・2. 237-239 (1998)
• [文献書誌] 後藤雅宏: "抽出技術集覧" 化学工業社, 70-73 (1997)