coneコンホメーションを有し、lower rim側のdistal位にスペーサー長の異なった3種類のカリックス[4]アレーンカルボン酸誘導体(酢酸ー酢酸、酪酸ー酢酸、及び吉草酸ー酪酸)を合成し、アルカリ金属の抽出及びナトリウム無添加・添加系における様々な金属の抽出挙動について検討した。アルカリ金属の抽出では、抽出剤は全て極めて高いナトリウム選択性を示した。これは、カリックス[4]アレーン誘導体の環サイズがナトリウムのイオン径にマッチしていることと、抽出剤が全てcone構造を有していることに帰因している。また、酢酸ー酢酸型の抽出剤では、1個の抽出剤分子で2個のナトリウムを同時に抽出しており、^1H-NMRの結果とナトリウムの抽出の結果より、1個目のナトリウムの錯形成が2個目のナトリウムの抽出を促進していることが明らかとなった。この挙動は、ナトリウム存在下での多価の金属のナトリウムとの共抽出を強く支持する結果である。さらに、これら抽出剤とナトリウムを錯形成させた錯体を用いて様々な金属の抽出の結果、極めて親和性の高かった鉛と銀以外の測定可能な金属は全てナトリウムと共抽出されることが分かった。また、ナトリウム非共存及び共存系で金属の抽出を行った結果、ナトリウム共存の場合に抽出領域が著しく低pH側にシフトしており、そのシフトの度合いは、金属の種類と抽出剤のスペーサー長によって異なった。スペーサー長の異なる抽出剤のさらなる開発により、共抽出の際のナトリウムと金属の立体緩和、金属の配位形態や大きさなどの影響を検討でき、より優れた分子設計が可能である。また将来的には、最も立体緩和の大きな吉草酸ー酢酸型の抽出剤では0.5Mのナトリウム中でも金属イオン抽出は阻害されないため、海水中でも使用可能なイオンセンサー素子としての開発も可能であると考えられる。
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