本研究では、食品・医薬品などの工業プロセスにおけるタンパク質の高効率分離・濃縮手法の確立を目的として、置換展開法を応用したイオン交換クロマトグラフィーの分離:濃縮特性の解析を行なった。まず、クロマト充填剤として、吸着面積の大きい多孔質イオン交換樹脂の使用を想定し、オルガノ(株)製200CT(平均粒径200μm)をモデル樹脂として採用した。はじめに対象タンパク質として牛血ヘモグロビンを用い、イオン交換平衡実験を行った。所定量の樹脂および所定濃度のヘモグロビン水溶液を三角フラスコに封入し、溶液中のヘモグロビン濃度の経時変化を、補助金により購入した分光光度計(ANA720W)により測定して吸着量を算出したところ、10日前後で樹脂1gあたりほぼ10×10^<-4>gの吸着量で平衡に達した。つぎに、直径15mm、長さ300mmのガラス製カラム型分離装置を制作して同樹脂を充填しヘモグロビン水溶液の濃縮実験を行なった。定量ポンプにより所定濃度のヘモグロビン水溶液を、破過体積まで供給した後、ポンプの流路を切り替え強塩基であるナトリウムイオンを含む置換剤を連続的に供給した。カラム出口には、補助金により購入したフラクションコレクタ(FRC-2120W/OVALVE)を接続して一定時間間隔で溶出液を回収し、前出の分光光度計によりヘモグロビン濃度の経時変化を測定した。ナトリウムイオン濃度を0.1mol/lとして置換剤組成の影響を検討したところ、NaCl水溶液ではほとんど濃縮が行なわれなかったが、NaOH水溶液では約1.3倍程度の濃縮が達成された。また、ナトリウムイオン濃度を0.5mol/lとしたところ、濃縮度は1.6倍にまで向上した。なおこれらの結果は現在Separation Science and Technology誌に投稿準備中である。
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