研究課題
本研究では、メタンを水蒸気の存在下で直接部分酸化させメタノールを合成する反応スキームを取り上げ、この反応に対する有効触媒の開発ならびに調製条件の検討、さらには反応機構の解明を行うことを目的とする。本年度は含浸担持およびゾルゲル法により調製した酸化モリブデン/シリカ系触媒を取り上げ、EXAFS、XPS、IRおよび質量分析計を用いて触媒表面での反応活性種を探るとともにメタノールの高収率化を図った。触媒は、ゾルゲル法においてはモリブデン酸アンモニウムをエチレングリコールに溶解し、加熱攪拌しながら珪酸エチルおよび水を加えてゲル化、焼成(600℃、2時間)することによって調製した。また、含浸担持触媒は、シリカ上にモリブデン酸アンモニウム水溶液を浸し、蒸発乾固の後、焼成(600℃、2時間)させて得た。水蒸気過剰雰囲気下でのメタンの部分酸化反応を行った結果、ゾルゲル法触媒におけるメタノール、ホルムアルデヒドの収率は含浸担持触媒を用いた場合よりも高く、600℃では4.1%となった。原料ガス中の水蒸気添加量を変化させた場合、含浸法触媒では添加量の増加と共にメタノール、ホルムアルデヒドの選択性、収率は共に減少し、炭酸ガスの生成量が増大した。一方、ゾルゲル法触媒においては添加量の増加と共にメタノール、ホルムアルデヒドの選択性、収率は共に増加し、炭酸ガスの生成量は減少する結果となった。水蒸気添加量8L/hでは選択性が50%、収率約4.5%にまで向上した。IRによる触媒表面の観測によりゾルゲル法触媒においてはモリブド珪酸塩の形成が反応に大きく寄与していることを見出した。モリブド珪酸塩は一般には300℃の温度で分解するが、600℃の温度でも水蒸気過剰雰囲気下ではシリカ、酸化モリブデン、水との平衡反応によりモリブド珪酸塩が恒常的に触媒表面上に存在し、反応に大きく寄与するものと考えられる。
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