昨年度は、貴金属超微粒子をシリカ粒子に内包することに成功したものの、これを用いてゼオライトを合成したところ貴金属超微粒子の粒子径がゼオライト合成中に大きくなり、目標としている「粒子径を制御された貴金属超微粒子を固定化した多孔質結晶体」が得られなかった。これは、ゼオライトの結晶化過程で原子の再配列が起こるため異原子である貴金属が押し出され、それが成長して粒子径が大きくなったものと考えられる。 そこで、今年度はゼオライトの結晶化過程の解明を中心にして、今後目標である「粒子径を制御された貴金属超微粒子を固定化した多孔質結晶体」が得られるかどうかの検討を試みた。合成するゼオライトとしては貴金属を担持して触媒としてよく用いられるZSM-5ゼオライトを選んだ。検討の結果、ZSM-5ゼオライトの結晶化過程、とくに結晶成長過程は反応母液中のシリケートモノマーが結晶核表面のシラノール基と重縮合反応する過程であり、その中で有機テンプレート分子であるテトラプロピルアンモニウムイオンがゼオライトの骨格構造を決定しているものと推察された。 昨年度および今年度の結果を考え併せると、目標である1粒子径を制御された貢金属超微粒子を固定化した多孔質結晶体」の合成は、合成条件についてはいまだ不明な点が多いものの、貴金属超微粒子を内包したシリカ粒子を核として新たにケイ素源を加えてゼオライトの結晶化を行うことで得られると考えられる。
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