有機溶媒中に溶け込む少量の水を用いて、アルコシキドを加水分解すると同時に水熱結晶化させる手法(HyCOM法)により酸化チタン(TiO_2)のナノ結晶を合成した。これを空気中で焼成することにより表面積などの物性を広い範囲で制御できることがわかった。また、このHyCOMTiO_2を空気存在下、溶液中の酢酸の光触媒分解反応に用いると、市販高活性TiO_2であるP-25(日本アエロジル)の約2〜3倍の活性(二酸化炭素(CO_2)生成速度)を示すことを見いだした。HyCOMTiO_2がきわめて高い光触媒活性を示す理由および活性に支配する因子について明らかにするため、焼成による酢酸吸着量および光触媒活性の変化を調べるとともに、両表面積は穏やかに低下したが1073K焼成後も17m^2g^<-1>という十分な表面積を維持した。表面積の低下にほぼ対応して酢酸吸着量も低下した。酢酸吸着量の減少に対応したCO_2生成速度も低下し、この反応系は基質吸着量が支配的であることがわかった。最もCO_2生成速度の大きかった未焼成のHyCOMTiO_2とP-25の酢酸吸着量等温線はともにラングミュアー型を示したが、飽和吸着量をみるとHyCOMTiO_2が約二倍大きかった。CO_2生成速度を吸着量に対してプロットすると、低吸着量側で直線関係が、また、高吸着量側で速度が飽和する現象がみられた。このプロットの傾きはそれぞれ31.6および38.9で、同じ吸着量でみるとP-25のほうが効率よく分解されることを示しているが、低吸着量で速度が飽和する。これに対し、同じ初期濃度で比較するとHyCOMTiO_2は吸着能が高いため分解速度が大きくなったと考えられる。
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