本研究の目的は、DNA分子の二次元導電性を測定することである。そのためには、DNA1分子を伸ばして固体基板に固定化する技術、さらに微少領域の二次元導電性を測定できる装置の開発、を行う必要がある。今年度は、1)DNAからなるナノ細線の作製、2)導電性原子間力顕微鏡(導電性AFM)の開発、を行った。 1)DNAからなるナノ細線の作製 DNAとカチオン性両親媒性化合物であるdimethyldipalmitylammonium bromideとのポリイオンコンプレックスのクロロホルム溶液を、劈開した雲母基板上にキャストすることで、ストライプ構造を有するDNA薄膜が得られた。ストライプ構造はAFM観察より、高さ2-5nm、幅500nmからなるナノ細線からできることがわかった。CDスペクトルやUVスペクトルの測定により、これらのナノ細線は二重らせん構造を維持しているDNA数分子が伸ばされ束になってできていることがわかった。この技術を押し進めれば、1分子のDNAの固定化も可能である。 2)導電性原子間力顕微鏡(導電性AFM)の開発 原子間力顕微鏡(AFM)の探針を、金と被覆することで導電性にして、電子レベルでのトポグラフィーと、電圧を印加した金修飾探針と試料の間に流れる電流との同時測定が可能な導電性AFMをあらたに開発した。導電性AFMの性能を評価するために、導電性高分子のキャストフィルムを用いて、キャフトフィルム表面のトポ像と二次元導電性を測定できることを確認した。 平成10年度は、DNA1分子からなるナノ細線を作製し、今回開発した導電性AFMで、その二次元導電性を測定する予定である。
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